何を考えその線を引いたか

なんか訃報が相次いでますね…色々と自分の好きな作品に関わっている人もいて悲しい。

今月の天空少女騎士団はアクション大巨編。30p近くずーっと戦ってます。騎士団の皆にやっと見せ場が出来たのは嬉しいけど、描くほうは大変(^^;でも楽しい。
1話以来総力出動のいろんな機体を描きながら楽しめたのは、写真や資料と首っ引きで見ているうちに設計者の考えてる事が追体験できたような気がするから。翼の平面形や機首の形状、パネルラインのとり方に至るまで、描いていると気づくことが沢山あります。

例えばわかりやすい例では垂直尾翼の形って比較的設計者の趣味が出やすいので、そのシルエットを見れば大体どこの会社/設計者の物か見分けられるようになります。面白いぐらい似てます。たまに違うのがあるのは設計者が違う時です。

さらに最近は水平尾翼の取り付け位置って結構重要じゃないのかと思ってたり。丁度漫画に出てくる機体が30年代後半の過渡期の機体なのでそのあたりバラバラなんですよ。
水平尾翼の位置は、主翼から発生する空気の流れが関わってくるので迎え角の大きい機動をしょっちゅうする戦闘機にとっては結構重要です。つける位置が悪いと空気の流れがうまく当たらなくて効きが悪くなったり逆に変な癖が出たりします。
時代が進むとレシプロ戦闘機の水平尾翼の位置はどんどん上に上がってくるのですが、一部の戦闘機は複葉戦闘機の位置、つまり後部胴体の真ん中辺りについていたりします。I-16とかモラン・ソルニエ、グラジエーターがそうですね。これだと実は水平尾翼より下の胴体の側面積が足りなくて大迎え角時の方向安定性に不利になります。横滑りしたときスピンに入りやすく、回復も難しくなるらしいんですね。
零戦も確か風洞模型ではこの問題が出て、水平尾翼を上に移していたはずです。
一方キ28やフォッカーD21,Bf109なんかはかなり上の方に水平尾翼が来てます。面白いのはCR.32で、複葉機なのにこれらの近代的な設計の機体と同じ位置に水平尾翼が来ています。これはフィアット社の設計者が趣味あるいは直感でこうしたのか、側面積確保の大切さを知っていたのか興味がわきますね。

他にも30年代後半の機体には翼の内側と外側で上半角を変えていてシルエットが逆ガルになっているデザインが目立つ事とか(カッコいいからいいけど)、ラジエーターの引き込み式が流行っていたのかとか、後の機体に繋がる設計者のポリシーみたいなものが色々見えてくるのが楽しかったです。
まあ漫画本編ではそのあたりの薀蓄は一切触れませんので、何とか絵からそんな雰囲気を感じ取ってもらえるぐらいの絵を頑張って描かなきゃなあと思う次第です。