妖しいヒヤシンス

半年ぶり位の更新です。もう誰も見ていないと思いますが、メモ代わりに。

#13「狩人の咆哮」から登場した市民軍の新型Strv“Kpz70ギアツィント”、ネーミングの由来はロシア語の「ヒヤシンス」からで、元々は旧ソ連自走砲の愛称です。
この回登場のドミトリー・タンザナイト大尉の設計した車輌はみな花にちなんだ名前がついているという設定になっております。

さてこの新型車輌、コンセプトは「次期主力機」であります。つまり現在の主力量産車輌であるPz66(カイラー)を代替すべく設計された車輌ということですね。WW2のソ連戦車で言うとIS(スターリン)戦車に相当する位置づけです。
そのため、火力・機動力・防御力のバランスが取れた設計になっていて、王国側で言うとドル・ダレッドのライバルになります
まず目を引くのが人型に近いそのプロポーションです。これは市民軍開発陣が王国側のStrv,とりわけ“マダン”に強い影響を受けたことの証と言えるでしょう。カイラーの特徴であった内蔵式の火砲を廃し、武装は両大腿部のユニバーサル・アタッチメントで装着するようになったのもその影響の一例です。
外装式にする事によって状況に応じた火器の交換が可能となり、運用に柔軟性が増しました。徹底した単品大増産主義を貫いていた市民軍のStrv開発史としてはこのコンセプトは異例の選択であり、この決定には異才ドミトリー・タンザナイト技術大尉の意向が強く働いていると言われています。カイラーにあった対歩兵用の掃射武器が無くなったことから、市民軍が対Strv戦を重視するドクトリンに移行したとも考えられます。
とはいっても、基本フレームの一部はカイラーとよく似たデザインで、そこに市民軍兵器の流れを見出すことが可能です。
外形を特徴付ける肩部の楔形増加装甲はこれまたマダンからのフィードバックであり、装甲であると同時に内部にはフライホイール・バッテリーが埋め込まれていて出力の強化と駆動時間の延長に一役買っています。
また、照準装置をはじめとするセンサー類が長距離戦にも対応できるよう強化されているのもポイントで、ここにも対Strv戦を重視する流れが見て取れます。
大幅にデザインが一新された腕部は格闘戦を意識していて、マニピュレータの精度も格段に向上しているようです。これには、マニピュレーターを介して火器を操るためと言う理由もあります。
腰部のフレームはカイラーに似た設計ですが、胸部装甲を下方に張り出させたり側面に補助フレームを張ることで防御力を向上させてなおかつ剛性の向上も果たしています。この部位は元々カイラーでは弱点とされていました。股関節部も二重に装甲が張られてサバイバビリティを向上させる設計です。
大腿部のユニバーサルジョイントはモーターで独立駆動するようになっていて、マニピュレータの負担を軽減しています。このジョイントには中距離戦用の90ミリ速射砲やロケット弾パック、さらに長距離砲戦に対応する140ミリ二連装高初速砲コアリツイアSVが装着可能で、カイラーの主砲よりも低重心で発射できるため命中精度も増しています。
機動力を支える脚部は基本設計はカイラーのものですが、フレーム材質の見直しによる剛性の向上と新型モーターの採用で反応速度・出力共に大幅に向上しています。この設計には同じく脚部の強化が主眼だった“スピゴット”の経験が活かされていて、また多種多様な火器を運用するための衝撃吸収能力も格段に向上しています。
下半身の剛性・出力が向上する事によるもうひとつのメリットは格闘戦能力の向上です。近接戦闘における駆動力を有効に生かせる事につながり、格闘戦用の打撃武器の開発も検討されています。

新世代のStrvとして実戦投入が始まった“ギアツィント”は生産ラインの切り替えに時間がかかりその数は緩やかにしか増加していませんが、各方面の戦線で良好な結果を挙げています。空挺及び一点突破用にスピゴットと同種のロケットシステム“ラケータ・クルイロー”テスト中で、より汎用性の高い主力兵器としての完成度を高めつつあります。