民族浄化の名の下に

一少年兵の視点で進む物語の中で、いまだ詳しく語られていない「敵」についてのヒントがカイラーの武装に隠されています。

地上掃射に特化した胴体下のユニットです。視界の広い光学センサーと小口径で発射速度の高い25ミリチェーンガンで構成されています。Strv戦にはあまり役に立たないこの装備をなぜカイラーは標準装備しているのでしょうか?
元々Strvは、歩兵の支援も重要な任務として設計されています。しかしその場合かつての自走砲の様に榴弾を発射できる大口径砲を装備したほうが都合がいいはずです。カイラーの122ミリ砲はそのような任務に対応していますが、いかんせん胴体固定方式のため射界が制限されやすく歩兵相手に使い勝手は悪い装備です。
ではなぜ機関砲を銃座として装備しているのか?
それはカイラーの設計思想にも関わる問題なのです。カイラーを用いている「市民軍」は絶対平等の理想に燃える指導者集団が生み出した革命政府で、その理想とする絶対民主制を広めるために周辺諸国に侵攻を繰り返しています。彼らにとっての教義とも言える汎民主主義を広めるために手段を選ばない体制です。
その教義に従わない民族に対して「浄化」と名づけた作戦行動を行い、軍民問わず掃討する作戦を進める上でカイラーは重要な役割を果たしています。精神的威嚇効果と圧倒的な対人戦闘能力、この二つを満たすためにカイラーは設計されたのです。対装甲車両用の高初速砲を装備しているのは、元々市街戦をする上での建築物やトーチカにに立てこもる歩兵等を効果的に排除するためのものでした。両腕の35ミリ機関砲も対装甲用の徹甲弾より榴弾が大目に装てんされています。
命中精度を上げるために採用された衝撃吸収フレームが柔軟な運用を可能とし、対Strv戦にも優れた性能を発揮する事が出来る優秀な車両となったのです。